「靴みがきが大好きなんです」

子供のころから大好きだったんです、靴みがきが。
靴そのものを好きになるのはもっと大きくなってから。
幼稚園児のころから家人(俳優だった伯父と伯母、おとなしい母)の靴を並べて、せっせと磨いたものです。
自分ははまだ子供だから革靴なんてもってなくて、ズックか下駄をはいて玄関のたたきにかがみこみ、まずは透明のクリームで汚れを落とし、次は靴の色に合わせたクリームを塗り(このとき、ブラシは使わず古布を巻いた指で塗ります)、ほどよく染み込んだらブラシでさっさっと磨く。
さらにやわらかな布でツヤを出していく。ていねいに心をこめて、靴を磨きました。
私の磨いた靴の評判はとてもよくて、銀座生まれ銀座育ちの洒落者だった伯父など「他のヤツが磨いた靴はダメだな。ピカピカにしやがる。ともみのは加減がいい」と喜んでいました。
そう、靴みがきのコツはピカピカにしないこと。底光りするようなツヤを出すことです。
今でも靴みがきが大好きで、秋になると皮ブーツや皮ジャン、バッグなんかも手入れをします。
もちろん季節が終わって仕舞うときも手入れをします。
だから私の皮ジャンもブーツも、もう15年になるのに味があってキレイなままです。
なんにも考えずに手を動かしていると、靴が少しずつ元気をとり戻してくれて、ときどき「ハァー」と息なんかも吹きかけてながら磨いてやると、靴が「私だけの一足」の靴になってくれます。
近ごろは「靴なんか磨かない」という人も多いみたいだけれど、こんなたのしいひとときを体験しないなんてもったいない。スニーカーでは味わえない手仕事のヨロコビです。
あなたをどこへでも運んでくれる大切な靴なのだから、可愛がってあげなくては。

15年来の「足の友」たち
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