生徒の恋愛とハタハタ、あるいはイカの干物との関係について

なんの前ぶれもなく、立派なハタハタ(別名カミナリウオ)の丸干しが送られてきました。送り主は脚本ゼミの同期生ふたり。
恋の噂はきいていたものの、ふたりの連名(女の名前が先)で送られてくると、こっちの方が照れてしまう。
レターも何も入っていないので、あれこれ推察する。
ふたりでハタハタが捕れる港町にでも旅をしたのか?
あるいは略式の婚約報告か?
送り主の住所は女の方になっているから、男が転がり込んだとか?
あれこれ考えたがよくわからん。
このふたり、在学中には恋の予感など無かったらしいのだが、卒業後まもなく皆で会う機会があって、そのとき女は男の鼻を初めてマジマジと見て、電流が走ったらしい。
「な、なんて美しい鼻なんだろう。こんな美しい男の鼻、見たことがない」
それから好きになったと私にも告白したのだから本当なのだろう。
残念ながら私は彼の鼻をマジマジ見たことがない。彼への記憶といえば、まずは「ラーメン大好き。一日一杯」。
とりあえずハタハタを炙って食べてみた。旨い。柑橘を絞るとさらに旨い。


ハタハタを齧っていたら、イカのことを思い出した。
これも突然、どっさりとイカの干物が送られてきた。
送り主はゼミの卒業生の女子。
こちらにはレターが入っていた。「恋人とはじめて伊豆へ旅行にきています。町中においしそうなイカの匂いがいっぱいです。イカ、送ります」
正直を言うと、私はスルメ系が苦手なのだが、彼女の気持ちが嬉しくておいしくいただいた。
もうひとつあった。山芋のわさび漬けだ。これはゼミの先輩後輩のカップル。
信州・安曇野に恋旅をしたとき、私のことを思い出したらしい。
生のままの山葵か、わさび漬けか迷った挙句、山芋のわさび漬けになったらしい。
う〜ん、残念。生のほうが便利だったのだが。でも二人の気持ちが嬉しくておいしくいただいた。
生徒たちはおいしいものを目にしたり匂いを嗅ぐと、食いしん坊の私のことを思い出してくれるらしい。
手料理を食べさせ、食いしん坊に育てあげた甲斐があったというものだ。
「好きな人がそばにいて、おいしいものを食べながら、たわいないことで笑いあえたら、それがいちばん」
3.11を経験した私たちは、この世界に不変なものなどないことを知っている。
だから、くり返す毎日を大切に生きてほしい。ちゃんと食べてほしい。そうやって揺るぎのない魂を培ってほしい。
私はゼミ生たちに脚本の書き方よりも、そのことを伝えたいのかもしれない。


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